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2009年5月

出羽桜酒造 出羽桜 大吟醸酒 本生

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以前呑んだ、いや今に至るまでたびたび呑んでいる出羽桜の缶入り吟醸酒の鮮烈な香りを想像していたけれど、予想に反して香り・味わいとも極めてまろやかなものだった。「一切火入れせず」の本生で、これほどまで穏やかな酒質であることに驚く。

岐阜の平瀬酒造 久寿玉・大吟醸にとてもよく似て、吟醸香や米の甘みやコクといったものが渾然一体となり喉を滑り降り、そのまま口中から整然と引いてゆくのだ。精緻な細工を施した和菓子を噛み砕いてしまった後のような、はかなさのみを残して。

出羽桜酒造 出羽桜 大吟醸酒 本生
都道府県:山形県
原料米:山田錦 精米歩合:48%
日本酒度:+6 酸度:1.2
アルコール度数:15.7度 酵母:小川酵母

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福光屋 加賀鳶 純米大吟醸・藍

いい年こいた大人でさえ白い壁ごしに思わず透かしてしまう、そんな鮮やかさをもったボトルの色である。

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加えて純米大吟醸でもあることだし、さぞや淡麗な液体が流れ出てくるのだろう、との予断はみごと裏切られ、中身は芳醇な山吹色であった。色づく水面にぐい、と唇を押しつければ、若いメロンの芳香がすっと駆け抜ける。同じ蔵の純米吟醸以上に酸は少なめで、ちろちろ、と輝かしい旨みが舌をくすぐり、喉越しも爽やか。これは正直言って、量をつい過ごしてしまう酒だ。

この酒質にしてこの値段。大手蔵の実力とは、かくも恐るべきものなのか。

福光屋 加賀鳶 純米大吟醸・藍
都道府県:石川県
原料米:山田錦 100%(兵庫県多可郡中区産)
精米歩合:50%
日本酒度:+4.0 酸度:1.4
アルコール度数:16.0
酵母:自社酵母

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神亀酒造株式会社 ひこ孫 純米吟醸

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この酒が「日本酒」というものに対して示している解釈は、かなり独特。ジャズに例えればジョン・コルトレーンの立ち位置、とでもいえばいいか。

琥珀色の液体を口に含むと、黒糖を思わせる落ちついた香りが口中の低いところへぐぐっ、と沈みこむ。

この段階で、飲む前にラベルを読んでいた私は「おお、これが5年の熟成(私が購入したのは2004BY)というものか…」と悦に入っていたのだけれど。

飲み込んだ次の瞬間口中に広がったのは、なんと青竹のような、若々しい涼やかな余韻なのであった。で、その余韻は舌の中心部に、まるで米粒のような形に立体的に収斂してゆくのだった。

円熟味漂う導入部、しかしフィニッシュはあくまで若々しく。この意外性だけでも充分に楽しい酒なのだが、温度を変えて呑んでみると、舌の中心部に残る余韻の表情に差があらわれ、さらに楽しめる。熱燗~ぬる燗では、鈍く輝く球形に。常温~冷やでは白い米粒の形に、余韻が奥行きをもって収斂してゆく。燗が美味い酒の代名詞になっているけれども、つまみ無しで呑む私の好みは常温~軽く冷やしたあたり。あ、そういや私の呑んだのは7号酵母.verだったけど、この酒には9号酵母.verもあるのだったっけ。次の機会には2本買って、温度の違いと酵母の違いが味わいに及ぼす影響を調べなくちゃなあ。ええと、熱燗ぬる燗常温に冷や、を2種類づつ呑めばいいんだよなあ(指折り)。うわ、肝臓の休まる暇がないなあ(嬉しそうに

神亀酒造株式会社 ひこ孫 純米吟醸
都道府県:埼玉県
原料米:山田錦
精米歩合:50%
日本酒度:+4 酸度:1.4
アルコール度数:16.0~16.9
使用酵母:協会7号

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月桂冠株式会社 プレミアム月桂冠2種

1年に20回ほど地方出張に出かける。仕事を終えた夜、繁華街の片隅にひっそり佇む居酒屋の暖簾をくぐり、その土地のうまいものを地酒で流し込んで「嗚呼」と声にならない呻きをあげる…という幸せな出張もないわけではない。しかしその一方で、夜の9時10時まで仕事をし、ホテルまでの帰り道に見かけた食事処で夕飯を慌しくかきこむと、寝酒を買い込み、部屋に戻り深夜2時3時までノートPCに向かう…という出張だってあるのだ。

後者の場合、時間が時間なので寝酒を買い込むのはコンビニである。そのため、コンビニで購入可能な日本酒で好みのものを見つけておきたい、との願いをずっと抱いていた。で、先日の名古屋出張の折、このところ気になっていた「プレミアム月桂冠」をサンクスで見つけ、購入した。

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【写真右 雄町純米大吟醸】
含み香に、ふわっとした穀物の香り。続いて舌先に生酒風の甘み・酸味の詰まった感じがあらわれる。後口は甘み、酸味が引いていくのにあわせて苦味が顔を出す。

【写真左 山田錦大吟醸】
上立ち香としてはそう強く感じないのだが、含み香でぶわっと吟醸香がひろがる。舌の脇に甘みを残して胃の腑に流れ落ちると、後口として甘みの余韻のなかから強い辛味が立ちのぼる。

どちらも、たしかに美味い。山田錦大吟醸なんて精米歩合35%ですよ、こんなに高い精米歩合の酒は初めて呑みました。けれどどこかで「味わいにもうひと押し欲しいなあ」と感じたのも確か。…というより、深夜まで苦吟しながら仕事をしたあとにぐいっ、とやる酒にしては上品すぎる印象があった。いまのところ出張時のコンビニ酒で最も好みなのは、リニューアル前の菊正宗ピン180mLパックです。

月桂冠株式会社 プレミアム月桂冠
都道府県:京都府

【雄町純米大吟醸】
原料米:雄町
精米歩合:45%
日本酒度:-4.5 酸度:1.3
アルコール度数:15.0~16.0

【山田錦大吟醸】
原料米:山田錦
精米歩合:麹米45%・掛米55%
日本酒度:+1.0 酸度:1.5
アルコール度数:15.0~16.0

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株式会社佐浦 純米吟醸 浦霞禅

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日本酒をあれこれ買い求め呑み比べる私の心の奥底には「ああ…これこそ求めていた味だ!もうこれ以外の酒を呑むことはないだろう」的に、究極の一本と巡り会えるのではないか、との期待がある。

ところでこうした期待を、異性に対して抱く時期ってありますよね。「貴女こそが理想の女性です!」って思える女性がどこかにいて、彼女と巡り会ってはじめて自分は結婚するんだ、と考える時期。

ここで唐突に、内田樹のブログから結婚について書かれた一説を引用します。

「異性が10人いたらそのうちの3人とは『結婚できそう』と思える」のが成人の条件であり、「10人いたら5人とはオッケー」というのが「成熟した大人」であり、「10人いたら、7人はいけます」というのが「達人」である。Someday my prince will come というようなお題目を唱えているうちは子どもである。
つねづね申し上げているように、子どもをほんとうに生き延びさせたいと望むなら、親たちは次の三つの能力を優先的に涵養させなければならない。

何でも食える
どこでも寝られる
だれとでも友だちになれる

最後の「誰とでも友だちになれる」は「誰とでも結婚できる」とほぼ同義と解釈していただいてよい。こういうと「ばかばかしい」と笑う人がいる。それは短見というものである。
よく考えて欲しい。
どこの世界に「何でも食える」人間がいるものか。
世界は「食えないもの」で満ち満ちているのである。
「何でも食える」人間というのは「食えるもの」と「食えないもの」を直感で瞬時に判定できる人間のことである。
「どこでも寝られる」はずがない。
世界は「危険」で満ち満ちているのである。
「どこでも寝られる」人間とは、「そこでは緊張を緩めても大丈夫な空間」と「緊張を要する空間」を直感的にみきわめられる人間のことである。
同じように、「誰とでも友だちになれる」はずがない。
邪悪な人間、愚鈍な人間、人の生きる意欲を殺ぐ人間たちに
私たちは取り囲まれているからである。
「誰とでも友だちになれる」人間とは、そのような「私が生き延びる可能性を減殺しかねない人間」を一瞥しただけで検知できて、回避できる人間のことである。

「誰とでも結婚できる」人間もそれと同じである。
誰とでも結婚できるはずがないではないか。
「自分が生き延び、その心身の潜在可能性を開花させるチャンスを積み増ししてくれそうな人間」とそうではない人間を直感的にみきわめる力がなくては、「10人中3人」というようなリスキーなことは言えない。
そして、それはまったく同じ条件を相手からも求められているということを意味している。
「この人は私が生き延び、ポテンシャルを開花することを支援する人か妨害する人か?」を向こうは向こうでスクリーニングしているのである。
どちらも「直感的に」、「可能性」について考量しているのである。
だから、今ここでその判断の正しさは証明しようがない。
それぞれの判断の「正しさ」はこれから構築してゆくのである。
自分がその相手を選んだことによって、潜在可能性を豊かに開花させ、幸福な人生を送ったという事実によって「自分の判断の正しさ」を事後的に証明するのである。
配偶者を選ぶとき、それが「正しい選択である」ことを今ここで証明してみせろと言われて答えられる人はどこにもいない。
それが「正しい選択」であったことは自分が現に幸福になることによってこれから証明するのである。

内田樹の研究室「学院標語と結婚の条件」(2009年4月9日)より

なぜ日本酒がタイトルの記事にこんな引用をするかというと、浦霞禅をおよそ10年ぶりに呑んだ瞬間「運命の人云々考えてもしかたないですよ?たとえばこの酒を『晩酌の友』とずーーーっと決めてしまって、その日本酒道的正しさを事後的に証明する、って人生も”あり”でしょ?」と耳元で囁かれてしまったからなのである。

上立ち香、含み香とも涼やかなミネラルの味わいを核に決して尖らず、果実様(あえて言うならメロン)の香りを口中に残しながら胃の府におさまったしばらくあと、じわ、と遅れて優しい酔いがやってくる仕掛け。文句なく美味い。多くのデパ地下で見かける買い求めやすさだって大きな魅力だ。

ああ…でも私は、この酒とともに心中する覚悟を決められなかった甲斐性なしです。もうすこしだけ、他の酒を見てみたい…今はただただ、そんな気持ちなのです・・(何の話だよ

株式会社佐浦 純米吟醸 浦霞禅
都道府県:宮城県
原料米:トヨニシキ、山田錦
精米歩合:50%
日本酒度:+2.0 酸度:1.4
アルコール度数:15.0~16.0
酵母:浦霞酵母

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